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- 介護支援専門員の資格取得を目指す人
- ケアマネジャーへの相談を検討している介護家族
- 介護職・福祉職でキャリアアップを考える人
- 介護業界への就職や転職を検討している人

介護支援専門員(ケアマネジャー)とは
ここでは、介護支援専門員(ケアマネジャー)の定義や呼び方の違い、具体的な役割と専門性について解説します。
介護支援専門員の定義と呼び方の違い
介護支援専門員とは、要介護認定を受けた高齢者やその家族に対して、介護サービス計画(ケアプラン)を作成し、適切なサービス利用を支援する専門職です。
法律上の正式名称は「介護支援専門員」ですが、現場では一般的に「ケアマネジャー」または略して「ケアマネ」と呼ばれています。
呼称の違いによって職務内容が異なることはなく、いずれも介護保険制度に基づき、サービスの調整や利用者支援を行う介護支援専門員です。
呼び方の違いと使われ方
- 介護支援専門員: 法律上の正式名称。制度上の公文書等で使用。
- ケアマネジャー: 一般的な呼び名。現場や求人情報で多用。
- ケアマネ: 略称。口語や日常業務で頻繁に使用。
なお、介護支援専門員は国家資格ではなく、各都道府県が実施する「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格し、必要な研修を修了することで名乗ることができます。
制度上の呼称と現場での通称の違いを理解しておくことで、混乱を避けやすくなります。
ケアマネジャーの役割と専門性
ケアマネジャーの主な役割は、利用者の心身の状態や生活環境を踏まえた上で、介護サービス計画を立案し、サービス提供事業者や医療機関との調整を行うことです。
利用者本人や家族との面談を通して課題を把握し、必要な支援を提案・実行するため、高い相談援助能力と福祉制度への理解が求められます。定期的にモニタリングを行い、状況に応じてケアプランを見直すことも重要な業務です。
ケアマネジャーは介護・医療・福祉の各分野を横断する立場にあり、専門性と調整力を活かして、多職種連携の中心的役割を果たします。利用者の自立支援を支える重要な専門職と言えるでしょう。

介護支援専門員の法的な位置づけと制度背景
ここでは、介護支援専門員(ケアマネジャー)がどのような法令に基づいて定められているのか、また制度創設の目的や背景について解説します。
介護保険法における法令根拠とは
介護支援専門員の法的根拠
法令・制度 | 対応条文・内容 |
---|---|
第7条第5項:「介護支援専門員」の定義を明記 | |
指定研修と登録制度により専門職として位置づけ | |
サービス提供に必要な人員配置を定めている |
このように、介護支援専門員は法令に基づいて設けられ、介護保険制度の適正な運用とサービス提供の中核を担う専門職と位置づけられています。
制度創設の目的と歴史的背景
介護支援専門員制度は、高齢化の進展により介護ニーズが急増する中で、利用者の自立支援を目的とした介護サービスを公平かつ適正に提供するために創設されました。
それまでの制度では、行政による「措置」に基づき介護サービスが一方的に提供されていました。しかし、介護保険制度の導入により、利用者が自分の意思でサービスを選び、事業者と直接契約をする「自己決定・自己選択」の仕組みに変わっています。
この制度改革に伴い、サービス内容を適切に調整・管理する専門職として介護支援専門員が設けられました。
介護支援専門員制度の主な流れ
年度 | 出来事 |
---|---|
1997年 | 介護保険法が成立 |
1998年 | 第1回 介護支援専門員実務研修受講試験を実施 |
2000年 | 介護保険制度施行。介護支援専門員制度が正式に開始 |
2006年~ | 資格更新制の導入や研修制度の見直しなど制度改正が継続的に実施 |
介護支援専門員制度は、制度改革の中で誕生し、高齢者の尊厳と選択権を守る専門的支援職として、今なお重要な役割を果たしています。

介護支援専門員とほかの職種との違いについて
ここでは、介護支援専門員(ケアマネジャー)と、介護福祉士・社会福祉士といった他の福祉系専門職との違いについて解説します。
業務内容や資格の種類、役割の相違点を把握することで、進路選択や職種理解に役立つでしょう。
ケアマネジャーと介護福祉士・社会福祉士の違い
介護支援専門員(ケアマネジャー)、介護福祉士、社会福祉士はいずれも福祉の現場で活躍する専門職ですが、支援対象や業務内容が異なります。
ケアマネジャーは、介護保険制度に基づいてケアプランを作成し、利用者とサービス提供機関の橋渡しを担う調整役です。一方、介護福祉士は日常生活の介助を中心とした直接支援を行う国家資格で、身体介護のプロフェッショナルといえます。
社会福祉士は、障がい者や高齢者、生活困窮者など幅広い対象に対し、制度利用や福祉サービスに関する相談援助を行う相談支援職です。このように、三者は支援方法や制度上の立ち位置において明確に役割が分かれています。
業務範囲・資格要件・役割の違いを比較

介護支援専門員(ケアマネジャー)の仕事内容
ここでは、介護支援専門員(ケアマネジャー)が日常的に行う主な業務について解説します。ケアプランの作成や関係機関との調整、要介護認定の申請代行など多岐にわたる役割を具体的に紹介します。
ケアプランの作成と管理
介護支援専門員(ケアマネジャー)の中心的な業務は、要介護者の介護サービス計画書(ケアプラン)の作成と管理です。
まず、アセスメント(課題分析標準項目)をもとに、利用者の心身の状態、生活環境、本人や家族の意向などを把握し、サービス担当者会議を経てケアプランを作成します。
ケアプランは、「第1表(サービス全体の週間スケジュール)」「第2表(居宅サービス計画:総合的援助方針と目標)」「第3表(サービス内容詳細)」で構成されており、厚生労働省が定めた様式に基づき記録・管理されます。
作成後も定期的にモニタリングを行い、状態の変化や目標の達成状況に応じて柔軟に内容を見直します。ケアプランは単にサービスを並べるものではなく、利用者の自立支援や生活の質(QOL)の向上を目指した目標志向型の計画であることが求められています。
科学的介護の推進やLIFE(科学的介護情報システム)への情報提出も踏まえ、エビデンスに基づいた計画立案と評価が重要です。
サービス提供者・医療機関・自治体との調整
ケアプランのとおりに支援が行われるようにするには、多職種との連携が不可欠です。ケアマネジャーは、訪問介護やデイサービスなどの介護サービス事業者、かかりつけ医や訪問看護ステーションと連絡を取り合い、利用者の状況に応じた支援体制を構築します。
また、行政の高齢者福祉担当窓口とも連携し、必要に応じて住環境整備や福祉用具貸与などの手続きも進めます。
サービス担当者会議を主催して関係機関と情報共有を図ることもあり、調整力やコミュニケーション力が問われる重要な業務です。利用者の生活が中断なく支援されるよう、各機関との円滑な連携を図ります。
連携機関と調整内容の例
関係機関 | 調整内容の例 |
---|---|
訪問介護事業所 | サービス提供日時の調整、支援内容の確認 |
医療機関(主治医) | 医療状況の把握、主治医意見書の作成依頼 |
訪問看護ステーション | 看護サービスの導入・連携 |
地方自治体 | 福祉用具・住宅改修、地域包括支援センターとの連携 |
要介護認定の申請代行と訪問調査
要介護認定の申請手続きは、介護サービスを利用するうえで必要不可欠です。
ケアマネジャーは、利用者本人や家族の希望に応じて市区町村への申請を代行することがあります。申請後は、認定調査員が訪問調査を行い、ケアマネジャーが立ち会うケースもあります。さらに、主治医意見書の取得支援や必要書類の取りまとめもケアマネジャーの役割です。
また、認定結果に基づいてケアプランを作成するため、認定区分(要支援・要介護)の正確な把握と、調査結果の読み取りも求められます。制度理解と実務能力を活かして、利用者が必要な支援を受けられる環境を整えることが重要です。
給付管理と介護報酬の申請業務
ケアマネジャーは、利用者が受けた介護サービスの内容を正確に記録し、介護給付費明細書(給付管理票)を作成して市区町村に提出します。
この作業は、介護保険制度に基づいてサービス提供事業者へ報酬が支払われるために不可欠です。事業者ごとの提供実績を集約し、過不足や不備がないかを確認したうえで、毎月の締め処理に合わせて申請手続きを行います。
また、介護報酬の申請には、国保連合会への伝送システムを通じた電子申請が行われるのが一般的で、正確性と事務処理能力が求められます。ミスのない管理が、事業者と利用者の信頼につながります。
モニタリングとケアプランの見直し
ケアマネジャーは、作成したケアプランが適切に実行されているかを確認するため、月1回以上の「モニタリング」を実施します。
利用者や家族、サービス事業者からの意見や課題を聞き取り、サービス内容や頻度が適切かを評価します。体調変化や家族の事情、利用者の目標達成度などを踏まえ、必要に応じてプランの変更や支援方法の調整を行います。
モニタリングの主なチェック項目
- 介護サービスの提供状況
- 利用者の心身状態の変化
- 家族や本人の満足度や意見
- ケアプランの妥当性と課題
- 次回サービス担当者会議の要否
定期的な評価を通じて、介護サービスが利用者の生活の質(QOL)向上につながるよう改善していくのが目的です。モニタリングはケアマネジャーの業務の中でも重要なプロセスであり、支援の質を保つ役割を担います。
業務外の依頼とその対応方法
ケアマネジャーは、制度上の範囲を超える依頼や相談を受けることがあります。たとえば、金銭管理の代行、家事の直接支援、医療行為に関する判断などは本来の業務外です。
他職種や地域の支援機関との連携を図り、適切な窓口や専門職へつなぐ必要があります。誤って業務外の支援を行うと、制度上の問題やトラブルの原因にもなりかねません。
業務外依頼の例とその対応例
業務外の依頼内容 | 対応方法 |
---|---|
金銭管理の代行 | 成年後見制度や地域包括支援センターを紹介 |
医療判断の相談 | 医師・訪問看護師など専門職へ連携 |
家事・掃除の直接支援 | 生活援助サービスや家政支援制度を案内 |
あらかじめ職務の範囲と限界を説明しておくことや、利用者・家族との信頼関係を築きながら誠実に対応することが求められます。境界線を意識しつつ、支援体制のコーディネーターとして柔軟に動くことが重要です。

【働く場所別】介護支援専門員の役割
ここでは、ケアマネジャー(介護支援専門員)が勤務する場所ごとに、具体的な業務内容や役割の違いについて解説します。施設、在宅(居宅)、地域包括支援センターといった就業先の違いにより、求められる支援のあり方も変わってきます。
施設ケアマネジャーの仕事内容と特徴
施設ケアマネジャーは、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)や介護老人保健施設など、入所型施設に常駐して施設サービス計画(ケアプラン)の作成と実施管理を担います。
利用者の多くが長期入所であるため、医療・介護スタッフとの連携を密にしながら、継続的なケアを提供する体制を構築し、日常的な介護サービスを提供します。
施設ケアマネジャーの業務には、入所時のアセスメント、定期的なモニタリング、医療連携、ターミナルケアの調整などが含まれます。施設内での生活支援に特化するため、生活環境が一定である反面、重度の要介護者に対する高度な対応力や調整能力が求められます。
居宅ケアマネジャーの仕事内容と特徴
居宅ケアマネジャー(居宅介護支援事業所所属の介護支援専門員)は、在宅で生活する要介護者に対し、個別の居宅サービス計画を作成・管理する役割を担います。
利用者宅を定期訪問して課題分析(アセスメント)を行い、本人や家族の希望を踏まえて介護サービスの種類・頻度を調整します。加えて、要介護認定の申請代行、主治医意見書の取得支援、福祉用具の導入、住宅改修の申請補助なども行います。
多様な生活状況に対応しながら、地域の医療・介護・福祉機関と連携して在宅生活の継続を支えるのが特徴です。
地域包括支援センターの業務と特徴
地域包括支援センターに所属するケアマネジャーは、「主任介護支援専門員」として、要支援者やその予備群(基本チェックリスト該当者など)に対する介護予防支援・包括的支援業務を担います。
業務は、高齢者の自立支援を目指した介護予防ケアマネジメントだけでなく、高齢者虐待の初期対応、認知症支援、権利擁護(成年後見制度の活用)など多岐にわたります。
地域包括支援センターにおける主任ケアマネジャーの主な業務
業務内容 | 関係機関・対象者 |
---|---|
介護予防ケアマネジメント | 要支援者・特定高齢者 |
権利擁護の相談対応 | 成年後見制度・行政窓口など |
高齢者虐待の初期対応 | 民生委員・行政・警察 |
認知症支援 | 認知症初期集中支援チームなど |
地域ネットワークの構築 | 医療機関・NPO・ボランティアなど |
保健師・社会福祉士と協働し、地域内の医療機関・NPO・行政とのネットワークを構築することも重要な役割です。地域の包括的支援体制の中核機関として、制度運用と地域福祉の視点を兼ね備えた対応が求められます。

介護支援専門員(ケアマネジャー)になるには
ここでは、介護支援専門員(ケアマネジャー)になるためのステップについて解説します。受験資格や実務経験の要件、試験の内容や難易度、研修の流れ、そして資格取得後の更新制度まで、順を追って詳しく説明します。
受験資格と必要な実務経験
介護支援専門員実務研修受講試験の受験には、一定の実務経験が必要です。
主に、法定の国家資格(介護福祉士・看護師・理学療法士など)を保有し、その資格に基づく業務に5年以上かつ通算900日以上従事していることが条件です。加えて、生活相談員などの相談援助業務に5年以上従事した者も対象となる場合があります。
主な受験に必要な国家資格
- 医師
- 歯科医師
- 薬剤師
- 保健師
- 助産師
- 看護師、准看護師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 社会福祉士
- 介護福祉士
- 視能訓練士
- 義肢装具士
- 歯科衛生士
- 言語聴覚士
- あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師
- 柔道整復師
- 栄養士(管理栄養士を含む)
- 精神保健福祉士
出典:第27回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について|厚生労働省
要件は都道府県ごとに若干異なるため、各年度の試験実施要領を確認する必要があります。勤務実績を証明する書類が必要であり、実務内容の証明には事業者側の協力が不可欠です。無資格者は原則として受験できません。
試験の内容・難易度・合格率
介護支援専門員実務研修受講試験は、年1回、各都道府県が実施します。試験は多肢選択式で全60問、120分で実施され、介護保険制度や支援技術、法令知識など幅広い内容が問われます。
正式な合格基準は毎年非公表ですが、70%程度の正答率が合格目安とされます。2024年度の全国平均合格率は約32.1%で、例年15〜25%前後で推移しています。
受験者は実務経験者に限られるため、基礎知識だけでなく応用力も求められます。特に介護保険制度とケアマネジメントプロセスに重点を置いた学習が効果的です。
出題範囲の例
- 介護保険制度・高齢者福祉制度
- 要介護認定・給付管理
- ケアマネジメントプロセス
- 高齢者・障がい者への支援技術
- 倫理・法令に関する知識
- 医療・リハビリ・栄養に関する基礎知識
実務研修の内容と登録の流れ
試験合格後は、都道府県が実施する「介護支援専門員実務研修」を修了することで、正式な登録が可能になります。研修は、全87時間(講義48時間・演習39時間)で構成され、主に事例検討やケアプラン作成の演習が含まれます 。
研修修了後は、修了証明書や必要書類を都道府県に提出して登録申請を行い、審査・認可を経て「介護支援専門員証」が交付されます。この登録証の交付をもって、ケアマネジャーとして正式に業務に従事することが可能となります。
研修では、LIFE(科学的介護情報システム)や地域包括ケアシステム、法制度、倫理的課題など、実務に必要な知識も体系的に学ぶ機会が設けられています。
資格の更新制度と注意点
介護支援専門員の資格は、永久ではなく5年ごとに更新が義務付けられています。有効期限が切れる前に「介護支援専門員更新研修」を修了し、都道府県に申請することで更新手続きが完了します。
資格更新の概要
区分 | 内容 |
---|---|
更新時期 | 介護支援専門員証の有効期限満了前までに実施 |
更新研修時間 | 実務経験の有無や回数によって異なる(下記参照) |
再研修の要件 | 有効期限中に業務従事していない場合など |
更新しない場合 | 資格失効(再登録には再研修などが必要) |
制度改正により研修内容や要件が変わることもあるため、定期的に都道府県の公式発表を確認することが望まれます。
【更新研修の研修時間(目安)】
研修区分 | 該当者 | 研修時間 |
---|---|---|
実務未経験者の更新研修 | 業務に従事していない人 | 54時間以上 |
実務経験者(初回更新) | ケアマネ業務に従事している人 | 88時間 (更新研修+専門研修Ⅰ) |
実務経験者(2回目以降) | 同上 | 32時間 (更新研修のみ) |
専門研修による更新(Ⅰ) | 一部地域で選択可能 | 56時間 |
専門研修による更新(Ⅱ) | 一部地域で選択可能 | 32時間 |

介護支援専門員の年収とキャリア
ここでは、介護支援専門員(ケアマネジャー)の年収や待遇、将来のキャリアについて解説します。平均給与や勤務先ごとの年収差、キャリアアップの具体策、介護業界における将来性について、厚生労働省の統計などに基づいて詳しく紹介します。
平均給与と施設別の年収比較
ケアマネジャーの平均年収は、厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、約465万円(2024年時点)です。ただし、勤務先や地域、業務量によって年収には幅があります。
介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどの施設系ケアマネジャーは、常勤勤務や夜勤手当があるケースもあり、年収がやや高めです。一方、居宅介護支援事業所では、事業所の規模や件数管理によって年収が前後します。
地域包括支援センターに勤務する主任ケアマネジャーは地方公務員に準じた給与体系を採用している自治体もあり、比較的高収入になることもあります。勤務形態や職場によって待遇に差が出るため、就職先の確認が重要です。
勤務先別のケアマネジャー年収(目安)
勤務先 | 年収の目安 | 特徴 |
---|---|---|
居宅介護支援事業所 | 400〜430万円 | 管理件数や訪問地域によって変動 |
特別養護老人ホーム・老健施設など | 420〜460万円 | 常勤・夜勤あり。法人規模による差が大きい |
地域包括支援センター | 440〜480万円 | 主任ケアマネジャーの資格が前提、公務員に準じた待遇も |
待遇改善・キャリアアップの方法
ケアマネジャーが待遇を改善し、専門職としてキャリアを築いていくには、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)の資格取得が有効です。
主任ケアマネジャーは、地域包括支援センターや法人内の管理職ポジションに就くことが可能となり、役職手当や基本給が上がるケースもあります。
その他、医療との連携を担うポジションや、認知症対応力向上のための研修を受けた専門職としてのステップアップもあるでしょう。
また、講師や研修指導員など、実務経験を活かした教育分野への展開も視野に入れられます。待遇向上には制度理解と合わせて、スキルと経験の積み重ねが求められます。
ケアマネジャーのキャリアアップの主な方法
- 主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)の資格取得
- 地域包括支援センターなどへの異動・転職
- 法人内の管理職(施設長・所長)への昇進
- 医療連携・認知症支援などの専門資格取得
- 講師・研修指導員などの教育・研修職への展開
介護業界でのケアマネジャーの需要と将来性
日本では高齢化の進行に伴い、介護サービスの需要が年々増加しています。
特に、在宅介護を支える居宅ケアマネジャーの役割は今後さらに重要になります。また、要介護者の多様なニーズに対応するため、多職種連携をコーディネートできる専門職としての価値が高まっています。
ただし、ケアマネジャーの登録者数は減少傾向にあり、高齢化による離職も相まって地域格差が拡大しています。
そのため、今後も一定の需要が見込まれ、専門性を持つケアマネジャーは優遇される傾向が強まると予想されます。長期的に見ても安定性と社会的意義の高い職種といえるでしょう。

介護支援専門員に向いている人の特徴
ここでは、介護支援専門員(ケアマネジャー)として活躍するために必要な適性やスキルについて解説します。求められる基本スキル、介護現場経験者が活かせる資質、そして未経験者でも活躍できるために意識すべき適性について、制度と実務両面からわかりやすく紹介します。
求められるスキル
ケアマネジャーには、利用者の状態や希望を把握し、適切なケアプランを立てる能力が求められます。そのため、傾聴力や観察力、状況を整理して言語化する力が不可欠です。
多職種と連携して支援を進めるため、調整力やコミュニケーション能力も重要です。また、介護保険制度や関連法令についての正確な理解と、それを実務に反映させる応用力も必要となります。
日々の記録作成や給付管理においては、PC操作や文書管理などのICTスキルも欠かせません。これらのスキルは研修や実務を通じて段階的に育成が可能です。
ケアマネジャーに求められる主なスキル
- 傾聴力(利用者や家族の話を丁寧に聞く力)
- 調整力(多職種と円滑に連携・調整する力)
- 文章力・記録力(ケアプランや記録を正確に作成)
- 制度理解力(介護保険制度・関連法の知識)
- ICTスキル(記録ソフトや国保連伝送などへの対応)
介護現場経験者が活かせる資質
介護職としての経験は、ケアマネジャーの業務において大きなアドバンテージとなります。利用者の身体的・心理的な変化に気づきやすく、実際の介助場面を想定したリアルなケアプランを立てることができます。
また、現場で培ったチーム連携力や、介護職・看護職との意思疎通の感覚も、サービス担当者会議などで有利に働きます。特に、利用者や家族の気持ちを理解し、信頼関係を築く力は現場経験者ならではの強みです。
身体介護を含めた支援の現実的な限界や工夫を理解していることは、実行可能性の高いケアプラン作成につながります。身体介護の視点をもったケアマネジャーは、制度と実態の両面から支援を設計できる貴重な存在です。
未経験者が意識すべき適性とは
介護現場の経験がない場合でも、ケアマネジャーとして活躍するための適性は備えられます。特に重要なのは、相手の立場に立って考え、丁寧に話を聴く共感力と、情報を正確に整理・分析する力です。制度を理解しロジカルに整理する力や、関係者間の意見を調整する冷静さ・柔軟性が求められます。
また、社会福祉士や看護師などの他職種出身者であれば、それぞれの専門性を活かすことも可能です。
未経験者は「介護スキル」よりも調整・支援・対話の担い手として、実務に活かせる社会経験や対人能力を自分なりに棚卸ししておくとよいでしょう。

介護支援専門員に相談できること
ここでは、介護支援専門員(ケアマネジャー)にどのようなことを相談できるのかについて解説します。介護保険制度の手続きから、医療やリハビリに関する連携、生活全般や家族の悩みまで、幅広い相談内容に対応できる専門職です。
介護保険の仕組みや申請方法
ケアマネジャーは、介護保険の仕組みやサービス利用の流れを丁寧に説明し、要介護認定の申請手続きに関する助言や代行も行います。初めて介護保険を利用する方にとって、制度の全体像を理解するのは難しいため、ケアマネジャーが窓口となって支援することは非常に重要です。
申請書類の記入支援や提出代行、主治医意見書の依頼、認定調査日の調整といった一連の流れについて具体的にサポートします。また、利用可能なサービスの種類、自己負担割合、地域ごとの支援体制などについても案内が可能です。
ケアマネジャーがサポートできる介護保険手続きの例
項目 | ケアマネジャーの支援内容 |
---|---|
要介護認定申請 | 書類作成の助言、提出代行、調査日程の調整支援 |
主治医意見書の手配 | 医療機関への依頼連絡、意見書取得の支援 |
サービス利用開始までの流れ | サービス種別の提案、自己負担額の説明、契約手続き支援 |
利用できるサービスの案内 | 訪問介護、通所介護、短期入所、福祉用具貸与などの紹介 |
医療・健康・リハビリなどの相談内容
ケアマネジャーは、介護だけでなく医療やリハビリなど健康面の相談にも対応します。
たとえば、かかりつけ医や訪問看護師、薬剤師、リハビリ専門職(PT・OT)と連携し、在宅生活での健康管理や服薬支援、機能訓練の必要性について助言します。また、退院後の在宅療養支援や、病状悪化時の緊急連絡体制の整備なども重要な役割です。
直接医療行為を行うことはできませんが、医療機関との連絡調整や多職種による支援体制づくりを支援することが可能です。介護と医療をつなぐ“橋渡し役”として、専門職と協働しながら包括的な支援を行います。
PT(Physical Therapist:理学療法士) | 病気やケガ、加齢などによって運動機能が低下した人に対し、座る、立つ、歩くといった基本動作能力の回復や維持、また障害の悪化を防ぐためのリハビリテーションを行う専門職。 |
---|---|
OT(Occupational Therapist:作業療法士) | 身体や精神に障害を持つ人が、日常生活を送る上で必要な動作や社会参加をスムーズに行えるように、作業活動を通してリハビリテーションを行う専門職。 |
生活支援・家族支援・精神面のフォロー
ケアマネジャーは、介護サービスの利用支援だけでなく、生活や家族の悩みに関する相談にも幅広く対応しています。たとえば、日常の家事援助や見守り、通院介助など、生活支援サービスの導入に関する調整やアドバイスが可能です。
また、介護者の負担を軽減するためのショートステイやデイサービスの活用提案、介護疲れや不安を抱える家族への声かけ、精神的なサポートも大切な役割です。
必要に応じて、認知症の家族会や地域の相談機関、カウンセリング機関との連携も図ります。

介護支援専門員の選び方と付き合い方
ここでは、信頼できる介護支援専門員(ケアマネジャー)の選び方と、良好な関係を築くためのポイントについて解説します。相性の良いケアマネジャーに出会うことは、安心した介護生活を送るうえで重要な要素です。
失敗しないケアマネジャーの選び方7つのポイント
ケアマネジャーは原則として、居宅介護支援事業所に所属する職員が担当しますが、利用者が選ぶことも可能です(※介護保険法施行規則 第82条)。
希望に合うケアマネジャーを選ぶには、以下のような点を確認することが推奨されます。
- 丁寧な説明があるか
- 話を遮らず傾聴してくれるか
- 訪問・連絡の頻度が適切か
- 必要なときに迅速に対応してくれるか
- 介護保険以外の情報も提供してくれるか
- チーム連携が上手か
- 利用者や家族の立場で考えてくれるか
事業所によっては事前の面談が可能な場合もあるため、不安な場合は事前に相談すると良いでしょう。
ケアマネジャーとの良好な関係の築き方
ケアマネジャーとの信頼関係は、サービスの質にも影響する大切な要素です。日常的なコミュニケーションを意識することで、より適切で柔軟な支援が期待できます。
関係性を築くための行動例
- 不安や要望は早めに相談する
- 感謝や信頼の気持ちを適切に伝える
- ケアマネジャーの訪問時にはゆとりをもって話す時間を設ける
- 誤解を避けるため、連絡手段は事前に確認
- トラブルがあっても冷静に話し合う姿勢を持つ
担当者変更などに繋がるような不満も、最初から対立的にならず、まずは相談する姿勢を心がけましょう。
訪問日以外の連絡手段(電話やFAX、アプリなど)を確認しておくことも、適切なコミュニケーションに役立ちます。
ケアマネジャーの変更が必要なケースとその方法
ケアマネジャーの対応が不適切な場合や、信頼関係が築けないと感じた場合は、変更を検討しても問題ありません。たとえば、連絡が極端に遅い、利用者や家族の希望を無視した支援が続く、信頼関係が築けないなどのケースが該当します。
ケアマネジャーの変更は利用者の自由として認められているため、遠慮せず安心して相談してよいとされています。
変更時の相談先
- 現在の居宅介護支援事業所の管理者
- 地域包括支援センター
- 市区町村の介護保険課

介護支援専門員のまとめ
介護支援専門員(ケアマネジャー)は、要介護者が適切な介護サービスを利用できるよう、ケアプランの作成や事業者・医療機関との調整を担う専門職です。
介護保険法に基づく法定職種であり、利用者の自立支援と生活の質向上を目的に、多職種連携の中心的役割を果たします。勤務先によって業務内容は異なり、施設、居宅、地域包括支援センターなどで活躍します。
資格取得には実務経験と試験・研修が必要ですが、今後も需要が高く、安定したキャリアが期待できます。
よくある質問
Q.ケアマネジャーと介護職の違いとは?
ケアマネジャーはケアプランを作成し、サービス事業者や医療機関との連携・調整を担う専門職です。一方、介護職は利用者の食事や入浴など日常生活の介助を直接行います。両者は役割も責任も異なりますが、相互に支え合いながら介護現場を支えています。
Q.介護支援専門員の資格取得に必要な学習期間と費用は?
介護支援専門員実務研修受講試験の受験には原則5年以上の実務経験が必要です。試験勉強には一般的に3〜6か月かける方が多く、テキスト代や通信講座の受講料などで数千円〜15万円ほどの費用がかかります。合格後には実務研修の受講も必須です。
Q.介護支援専門員は未経験・文系でも目指せるの?
介護や医療現場での一定の実務経験があれば、学部を問わず受験可能です。文系出身でも、制度を理解する力や文章力、調整力は強みになります。まずは介護職として経験を積み、段階的に資格取得を目指す道も現実的です。
Q.介護支援専門員は試験合格だけでは働けないのはなぜ?
介護支援専門員実務研修受講試験に合格しても、すぐに現場で働けるわけではありません。都道府県が実施する実務研修を受講し、修了することで初めて「介護支援専門員証」が交付されます。制度的に実践力を伴うことが求められているためです。

海野 和(看護師)
この記事の監修者情報です
2006年に日本消化器内科内視鏡技師認定証を取得し、消化器系疾患の専門的な知識と技術を習得。2018年にはNCPR(新生児蘇生法専門コース)の認定を取得し、緊急時対応のスペシャリストとしての資格を保有。さらにBLS(HeartCode®BLSコース)を受講し、基本的生命維持技術の最新知識を習得。豊富な臨床経験と高度な専門資格を活かし、医療・介護分野における正確で信頼性の高い情報監修を行っています。
【保有資格】
・日本消化器内科内視鏡技師認定証(2006年取得)
・NCPR(新生児蘇生法専門コース終了認定証)(2018年取得)
・BLS(HeartCode®BLSコース)受講済み
