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科学的根拠に基づくケアを実践したい介護職の方
介護のケアの質向上や評価に課題を感じている事業所の方
エビデンスを取り入れた支援設計を学びたい管理者の方

介護におけるエビデンスとは?
介護におけるエビデンスとは、経験や感覚ではなく、科学的な根拠に基づいて支援方針を考えるための情報を指します。
CHASEは2020年5月より利用申し込み受付が開始され、事業所で電子的に記録されたアセスメント情報や、訪問介護サービスの内容(身体介護・生活援助のコード分類など)を収集していました。その後、2021年4月にVISITと統合され、科学的介護情報システム「LIFE」として本格運用が開始されました。
さらに、身体機能・栄養・口腔・認知・精神といった複数領域の先行研究が整理され、介護予防マニュアルの改訂に活用されています。
こうした取り組みにより、根拠に基づいた質の高い支援を継続的に行うことが可能になります。
出典:介護分野における今後のエビデンスの蓄積に向けて収集すべき情報について (議論のとりまとめ)(案)
出典:エビデンスを踏まえた効果的な介護予防の実施に資する介護予防マニュアルの改訂のための研究

介護におけるエビデンス構築の仕組み!LIFEの成り立ち(CHASE・VISITの統合)
日本では、介護の質を客観的に高めるために、科学的根拠に基づく介護の推進が進められています。
その中心にあるのが、介護現場のデータを収集・分析・フィードバックする「LIFE」「CHASE」「VISIT」という3つの仕組みです。それぞれの役割を整理して理解することが重要です
【LIFE】現場に「根拠あるケア」を広げる仕組み
LIFE(Long-term care Information system For Evidence)は、全国の介護事業所から提供されるデータを一元的に収集し、分析結果を現場へフィードバックする国のシステムです。
事業所は日常業務で得られたデータをLIFEに入力し、国はその情報を活用して介護報酬加算やサービス改善のための科学的検証を行います。
これにより、感覚ではなく根拠に基づいたケアの提供や、自立支援・重度化防止の効果測定が可能になります。
【CHASE】アセスメントや記録から根拠を集める仕組み
CHASEは、介護現場で蓄積される多様な情報をデータベース化し、エビデンス構築を支えるために設計されたシステムです。
栄養、リハビリ、認知症、満足度、ケアプラン、アセスメントなどを電子的に取得し、分析可能な形で収集します。
特に、既存の電子記録から自動抽出できる情報を中心に設計されており、現場の負担を最小限に抑えながら科学的根拠を蓄積する仕組みです。
CHASEは後のLIFEに統合され、エビデンスに基づく介護政策の基盤となっています。
なお、2024年度(令和6年度)の介護報酬改定に対応して、LIFEシステムは大幅に刷新され、2024年8月1日より本格稼働を開始しました。主な変更点として、①電子請求受付システムのID・パスワードでの利用登録が可能になり、②フィードバック情報がExcel形式からブラウザ上で確認できる形式に変更され、③複数時点の時系列変化の参照や全国値との詳細な比較が可能になりました。
これにより、現場での活用がさらに促進されることが期待されています。
【VISIT】リハビリの効果を見える化する仕組み
VISITは、通所リハビリテーションおよび訪問リハビリにおけるサービスの質を評価するためのデータベースです。
事業所が記録するリハビリ計画や実績をもとに、効果や改善度を数値化し、CHASEと連携してエビデンスを強化します。
特にリハビリの効果測定や機能改善の持続性などCHASEVISIT、科学的根拠を裏付けるデータとして重要な役割を果たしています。
LIFE・CHASE・VISITが一体となることで、介護全体の質の向上と政策評価の精度アップにつながるでしょう。
出典:「VISIT(通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集に係るシステム)の利用申請受付機能」のリリースについて/大阪府(おおさかふ)ホームページ [Osaka Prefectural Government]
出典:介護関連データベースに関する取組み|厚生労働省

介護予防におけるエビデンスの重要性と最新動向
介護予防の取り組みを効果的に進めるには、感覚や経験ではなく科学的根拠に基づいた実践が求められます。
近年、厚生労働省や研究機関では、エビデンスに基づく介護予防の確立に向けて、マニュアル改訂やデータベース整備など多角的な取り組みが進められています。
介護予防マニュアル改訂にみる科学的介護の推進
介護予防マニュアルは、2006年の初版以来、2009年・2012年と改訂が重ねられてきました。2022年3月31日に研究報告書として公開され、翌4月22日に厚生労働省が正式に発表した、国立長寿医療研究センター理事長の荒井秀典氏を研究代表者とする研究班による、10年ぶりとなる第4版です。
この改訂では、全国自治体へのアンケートと文献レビューをもとに、最新エビデンスを反映した内容へ刷新されています。
とくに「運動」「口腔」「栄養」「認知」「閉じこもり」「うつ」の6領域に加え、以下の要素が新たに盛り込まれました。
- 疾患別運動マニュアル(運動器疾患・糖尿病・呼吸循環器疾患・脳卒中など)
- 通いの場(地域参加によるフレイル予防)に関する章の新設
- 自治体現場の課題・ニーズを反映した実践的改訂
この改訂により、地域支援事業の現場で「エビデンスに基づく介護予防」の実践が可能になりつつあります。
出典:エビデンスを踏まえた効果的な介護予防の実施に資する介護予防マニュアルの改訂のための研究
出典:厚生労働省「介護予防マニュアル 第4版」(令和4年3月)
CHASEによる介護データのエビデンス化と活用
介護分野では、科学的裏付けを強化するために「CHASE(Care, Health Status & Events)」データベースの整備が進められています。
CHASEは、介護記録やサービス提供情報を電子的に収集し、研究や政策立案に活用するための国主導の基盤です。主な特徴は以下の通りです。
分類 | 内容 |
|---|---|
対象データ | 介護支援専門員のアセスメント、サービス計画、リハビリ・栄養・認知機能データなど |
目的 | 科学的介護(EBPM:エビデンスに基づく政策立案)への活用 |
運用方針 | 現場の負担軽減を考慮しつつ、電子記録から自動的に抽出・格納 |
CHASEは、既存のVISIT(通所・訪問リハの質評価DB)を補完し、今後のLIFE(科学的介護情報システム)の基盤として機能しています。
経済産業省による介護テクノロジー実装とエビデンス構築事業
経済産業省では、令和6年度(2024年度)より『介護テクノロジー社会実装のためのエビデンス構築事業』を推進しています。本事業では、令和9年度(2027年度)までに45件の実証を実施し、令和12年度(2030年度)までに11件の機器開発を採択することを目標としています。
この事業は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)を通じて実施される公募型事業であり、経済産業省・厚生労働省が定める重点分野(2024年5月より「介護テクノロジー利用の重点分野」に名称変更)に該当する)に該当するテクノロジーを対象としています。
主な支援内容は以下の3点です。
エビデンス構築支援:介護現場での機器導入・実証を通じ、導入効果や改善度などの効果指標を確立
エビデンス基盤整備:自治体・企業・研究機関が連携した実証フィールド(リビングラボネットワーク等)の構築
海外展開支援:国内で構築したエビデンスをもとに、アジア諸国などへの普及を支援
本事業により、『科学的介護×テクノロジー』の社会実装が加速されることが期待されています。
出典:介護テクノロジー社会実装のためのエビデンス構築事業
出典:評価報告書一覧(令和6年度) (METI/経済産業省)
出典:新規研究開発事業に係る事前評価書
介護予防におけるエビデンス活用の今後
今後の介護予防では、科学的根拠に基づいたPDCAサイクルの確立が重要です。
自治体・研究機関・企業の連携による「エビデンスの共有とフィードバック」が進むことで、介護予防施策の効果検証が可視化され、地域差の解消にもつながります。
また、LIFE・CHASEの分析結果を活かしたマニュアルやガイドラインの更新が継続的に行われることで、より自立支援型の介護予防が期待されます。
出典:科学的介護情報システム(LIFE)について
出典:エビデンスを踏まえた効果的な介護予防の実施に資する介護予防マニュアルの改訂のための研究

どんなデータが“介護のエビデンス”になるか
介護におけるエビデンスとは、利用者の状態や提供したサービスの内容を客観的に記録・分析し、支援の効果を確認できるデータを指します。
LIFEやCHASEでは、現場で日常的に入力される情報を基に多面的なデータを蓄積し、介護の質を根拠をもって説明できる仕組みが整えられています。
利用者の状態データ(心身・生活・認知機能)
エビデンスの中心となるのは、利用者の心身の状態に関する情報です。対象となる主な項目は次の通りです。
- ADL:食事・排泄・移動などの日常生活動作
- IADL:買い物・調理・金銭管理などの手段的動作
- 認知機能
- 栄養・口腔・睡眠・排泄 などの生活領域
これらを定期的に評価・記録することで、状態の変化を時系列で把握できます。
その推移から、提供したサービスが自立支援や重度化防止にどの程度寄与したかを分析する基盤となります。
出典:科学的介護情報システム(LIFE)について
出典:ケアの質の向上に向けた 科学的介護情報システム(LIFE)の利活用の ための自治体職員向け手引き
介入・サービス提供内容のデータ
次に重要なのが、どのような支援が実施されたのかを示すデータです。訪問介護・通所サービスなどでは、以下のような分類に従って記録します。
- 身体介護
- 生活援助
- 機能訓練・リハビリ
- 栄養改善・口腔ケア など
サービス内容がコードに分類されることで、介入と状態変化の関係を分析できるようになります。
これらの結果は、介護報酬の加算評価や支援モデルの見直しに反映され、現場の実践改善にもつながります。
アウトカム・満足度・QOLデータ
エビデンスとして重視されるもう一つの領域が、介護サービスの成果(アウトカム)を示すデータです。具体的には、利用者の満足度調査、生活の質(QOL)の変化、介護度の維持・改善率などが対象となります。
対象となる指標
- 利用者・家族の満足度
- 生活の質(QOL)の変化
- 介護度の維持・改善率
これらは主観的な満足度だけでなく、客観的な状態変化との関連も分析され、科学的に介護の「効果」を示す根拠となります。
CHASEではこうしたアウトカム情報の体系化が進められており、将来的には国際的な比較研究にも活用が期待されています。

介護におけるエビデンスの今後の課題
科学的介護の推進は、データを蓄積する段階から、活用・改善につなげる段階へ移行しています。その中で、入力負担、データ形式の統一、在宅領域への展開といった課題が浮き彫りになっています。
入力負担と現場教育の課題
LIFE・CHASEの導入により、記録業務が増えたと感じる現場は少なくありません。その背景には、以下の課題があります。
- 記録項目が多く、理解・入力に時間がかかる
- ICT操作スキルのばらつき
- デジタル教育の機会不足
今後は、センサー・音声入力など自動取得技術の活用、記録様式の簡略化、デジタル研修の充実が求められます。
また、LIFEフィードバックを職員教育に活かすことで、記録が“結果につながる実感”として共有されやすくなります。
データ項目と手法の標準化
各事業所やベンダーで記録形式が異なると、比較・分析が困難になります。これを解決するために、共通様式(CSV・API連携)の整備や、測定尺度の統一(ADL指標・QOLスコアなど)が進められています。
- CSV・APIによるデータ連携ルールの統一
- ADL・QOLなど測定尺度の共通化
- 国際的な評価基準(ICF・ISO)との整合性
また、評価手法の標準化により、地域間や事業所間での公平な比較が可能になります。
今後は国際標準(ISO・ICF分類)との整合も視野に入れた共通基盤の確立が必要です。
在宅介護への展開と自治体連携
施設中心のデータ収集から、在宅・地域包括ケアへの拡張も進められています。
自治体主導でセンサーやアプリを活用した見守り・健康管理データを収集し、CHASEの項目と連携する取り組みが始まっています。
また、地域包括支援センターや訪問介護事業者とのデータ共有を通じて、在宅支援のエビデンス化を推進。将来的には、自治体・医療機関・介護事業所を横断した“地域版LIFE”の構築が期待されています。
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まとめ
介護における「エビデンス」とは、感覚や経験に頼らず、科学的な根拠に基づいて支援を組み立てる考え方です。データをもとにしたケアの標準化は、利用者の生活の質と職員の専門性を高める土台となります。
また、LIFEやCHASEの仕組みは、介護現場の記録を科学的に分析し、改善を重ねることで根拠ある支援へとつなげるものです。
今後は、経済産業省の「介護テクノロジー社会実装事業」などを通じて、在宅支援や地域包括ケアにもエビデンス活用が広がる見込みです。
まずは、「何を・どのように記録するか」をチームで話し合い、統一することから始めると良いでしょう。
よくある質問
Q.介護における「エビデンス」とは何を意味しますか?
介護現場での経験や勘ではなく、科学的な根拠(データ・研究結果)に基づいて支援方針を考えることを指します。利用者の状態データや介入結果を分析し、根拠をもってケアを改善する取り組みです。
Q.介護現場でエビデンスを活用するメリットは何ですか?
科学的根拠に基づいた支援が可能になり、ケアの質が客観的に評価できます。また、改善効果を見える化できるため、介護報酬加算や人材教育にも活かせます。
Q.どのようなデータが「介護のエビデンス」になるのですか?
主に、利用者の状態(ADL・認知・栄養など)、サービス内容(身体介護・生活援助など)、成果(QOL・満足度・介護度改善率)が該当します。これらを組み合わせて介入効果を検証します。
Q.介護予防におけるエビデンス活用の最新動向は?
国立長寿医療研究センターによる介護予防マニュアルの改訂や、経済産業省による介護テクノロジー実証事業など、科学的根拠に基づく介護予防の実践が全国で進んでいます。
Q.現場でエビデンスを活用する際の課題はありますか?
記録業務の負担、データ形式の統一、ICTスキル格差などが課題です。今後は自動取得技術や標準化の進展により、より実践的な活用が期待されています。
Q.在宅介護でもエビデンス活用はできますか?
在宅介護でもエビデンスは活用できます。自治体や地域包括支援センターが主導するデータ連携や見守りシステムの導入により、在宅支援でもエビデンスに基づくケアが広がっています。
[介護サーチプラス]編集部
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介護業界に特化した情報を発信するオウンドメディア。
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